「なぜ日本人はそんなにショパンが好きなのですか?」
ポーランド在住25年のピアニスト西水佳代の„Chopin’s music & stories by Kayo”アルバムの入門編。 ショパンに魅了され本場ポーランドでショパン全曲演奏会も実現した彼女の長年の経験からアルバム作成に至るまでの考察を紹介する。
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フリデリク・ショパン: 1.舟唄 2.夜想曲第2番 3.バラード第1番 4.華麗なる大円舞曲第1番 5.幻想即興曲 6.スケルツォ第2番 7.練習曲作品10第3番 "別れの曲" 8.前奏曲作品28第7番 9.練習曲作品10第12番 "革命のエチュード” 10.葬送行進曲 11.英雄ポロネーズ
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「なぜ日本人はそんなにショパンが好きなのですか?」
これはポーランドに住んで四半世紀以上の私が老若男女問わず、音楽関係者に限らず、クラシックのことはあまり詳しくない人にまで質問され続けている決まり文句の一節だ。「ショパンが好きなのは日本人だけじゃありませんよ。世界中で愛されてると思いますよ。」と抵抗したところで、暖簾に腕押し。「どうしてそんな風に思うんですか?ショパンコンクールに出場者も観客も押し寄せるから?」とこちらが聞き返したところで引き下がってはくれない。
ショパンの音楽に魅了されポーランドに渡った私は、ショパンの作品を全曲演奏し、弾けば弾くほど飽きることなくさらに深みにはまってしまっている。そしてこの魅力を一人でも多くの人に伝えたいと思いながら演奏の腕を磨き、よりショパンに近づくべく彼の残した手紙を読んでいる。こうしていろいろ考察していくうちに、冒頭の質問の中に大切な鍵が隠されているのでは?と思い始めた。
ある意味では日本から逃げ出してきた私。ポーランドに来てすぐに心地よくポーランド人に馴染み、子供たちを育てながらポーランドの風習に従ってどっぷりポーランドに浸かって生活し、ポーランド人を知れば知るほど自分の中の日本人の血を感じ、若い頃は否定していたもしくは理解できなかった日本人の良さも認めだした。
ショパンの父はフランス人で、ショパン自身もフランスで半生近くを過ごしパリで息を引き取ったが、ショパンは自分のことを「正真正銘のポーランド人」だと常に意識していた。ポーランドは概して日本贔屓だ。どうしてだろうと考えてみると、ポーランド人と日本人は気質や美徳感に似たところがあるところに行き着く。そうすると、この25年間たずねられ続けた問いに答えることが私自身のピアニストとして、ポーランド在住日本人としての課題ではないかと感じ、演奏と語りによってその謎解きを試みることを決心する。
こうして私の“Chopin's music & stories by Kayo”シリーズ作成が始まります。 「なぜ日本人はそんなにショパンが好きなのですか?」 - 日本人がどこまでショパンを好きなのかはともかく、なぜポーランド人がそう思ってしまったのか、「ショパン音楽と日本人」に何か隠されたつながりがあるのか、最初の7巻でショパンの作品の根底に流れるもの、軸になっているもの、魅力や秘密をいろんな角度から探り、第8巻からはショパンの音楽活動に沿ってその背景を手紙を紹介しながら追い、その時期に作曲された作品をCDに収録したいと思います。20巻ほどで全作品が納まるはずですが、アルバムのCD演奏をサイトのお話と合わせて聴きながらショパンの音楽の魅力や不思議に少しでもお近づきいただけると幸いです。
このアルバムには日本人に人気のある名曲を集めてみました。ようこそショパンの音の魔法の世界へ♪
2014年7月 西水佳代
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